変わるもの、変わらないもの

ムダと必要 のアイダに。

今回の授業は、ロングライフデザインを掲げるD&DEPARTMENTの仕掛け人、ナガオカケンメイさんと、広島で長きに渡りカルチャーとして映画配信を行うサロンシネマ・八丁座でおなじみ、序破急の蔵本順子さんによるトークイベントです。

LECTに入る蔦屋書店T-SITEにて、Appleの椅子を手がけるなど広島を代表する家具メーカー、世界のMARUNIさんとジン大とのコラボレーションで実現しました。それでは早速トークイベントへとご案内いたしましょう。

ジン大コーディネーターのキムラミチタ(以下:キムラ)が司会者から呼び込まれ、メインゲストのナガオカケンメイさん(以下:ナガオカ)、蔵本順子さん(以下:くらもと)のご登場です。キムラが司会に代わり、特別授業のスタートです。

変わるもの、変わらないもの

ナガオカ:八丁座の噂は東京まで拡がってますよ

くらもと:借金だけは大きいんですが(笑)、意地だけで作りました。東京にも負けまいと

ナガオカ:意地で作ったってのがいいですね

くらもと:広島は原爆でリセットされたので、復活力があるんです。あとは大手の某映画会社にイジメ抜かれたので(笑)

軽快な掛け合いで話が進み、話題は八丁座こだわりのマルニ特注の椅子に。

ナガオカ:初めはダメダメだったと伺いましたが……

くらもと:あまりにも立派すぎまして。かわいくないから座りたくない(笑)

劇場の懐かしい感じがするデザインのソファ席は、お洒落という言葉が似合う素敵な椅子ですが、シネコンの3倍ほどの価格とのこと。とある映画監督曰く、世界一の客席だそうです。その開発秘話が面白い。

ナガオカ:ダメ出しの後に、ものすごい数のデザインをもらったとか?

くらもと:そうそう、やっと本気になったか?みたいな。なにくそ!というのか

ナガオカ:ナニクソ!が広島っぽい?

くらもと:ええ。復活力、再生力ってのはやはり広島人あるある

無意味でムダが贅沢

「デザインとは?について伺いたい」

不意に、蔵本さんが尋ねます。アドリブだったようですが、すかさず司会のキムラ氏がフォローに回ります。それを受けナガオカさんは「今はデザイナーの名前はどうでもいいし、名もなき生活雑器の方が大事」と。さらに「似て異なる話で、大阪の人に面白いお店どこですか?と聞くと、おもろいおっちゃんがやってるお店を教えてくれるが、東京だとカッコイイ空間が返ってくる。八丁座には蔵本さんが実際にいるのがいいし、そういう時代になってきている」と続けます。

そこにあの人がいるから面白い。ただの観光ではない、人に会いに行く新しい旅のスタイルにも通じる部分があります。そうして映画館事情へ。

くらもと:アメリカ文化のシネマコンプレックスは徹底した効率化。それもいいけれど、やっぱり無意味でムダな時間って最高に贅沢なの

ナガオカ:デザインの話も似ていてカッコ良さを追求するとちょっと違う。さっきのマルニさんの椅子も座り心地を追求することで、いい意味で少しダサくなってかわいくなったんですよね

くらもと:一番いい座り心地と観やすさを追求して席によって少しづつ微妙に角度や配置を調整しているの。マルニさんにやってもらったんですが。それこそ途中でケンカしながらね(笑)。その方がいいモノができる。映画も同じなの

キムラ:今は仲良しでつまらない?

くらもと:頼むから自分の劇場で流している映画の悪口は止めてくれってスタッフに怒られる(笑)

キムラ:いつからか「キライ」と言えないような空気になってますね

くらもと:だから好き嫌いではなく、好みの問題というようにしているの。好みじゃなくても人が入るメジャーな作品を上映しつつも、マイナーだけれども、こだわりの上質な作品も上映している。最近はマイナー作品の入場者数も増えていて。

キムラ:本物が伝わりはじめたんでしょうか?

くらもと:デザインもそうじゃありません? 多様性というか。

デザインの原点、MARUNI60

キムラ:実は今日から1ヶ月間、ナガオカさんプロデュースMARUNI60の展示イベントがはじまっています。ナガオカさんから見てMARUNI60の椅子、どこに価値を感じられました?

ナガオカ:海外製ではない日本のデザインの原型が、広島のマルニの原型があるところですね。1960年代に作られたプロダクトには、いつの時代にも通用する定番ものが多かった。だけど消費者は新しいものを求めるから企業も新しいものをドンドン作る。だから古くなった定番ものが廃番になってしまう。それをなんとか阻止したくてはじめたのが60シリーズです

キムラ:映画にも置き換えられそうですね?

くらもと:60年代は非常にいい映画が多いので、うちでは細く長く旧作でもいいものを上映し続けてます

ナガオカ:まちの老舗と言われるお店は大抵そうですよね。例えば本屋でも売れる本と売りたい本。人気がないけど、まちのためにと自分で売り続ける。だから応援が必要で、応援がないとつぶれますよ

くらもと:なので勝ちたいでなくて、負けないの精神で生き延びている。それにはやっぱり、情熱が必要。

次いで、D&DEPARTMENTが発行する旅行誌について。

キムラ:47エリアでその土地らしい場を探して2ヶ月住んで作るという雑誌ですが、なぜか、まだ広島がない?

ナガオカ:大人の事情です(笑)。お金が大変かかるので、出してくれる人がいるところから作っているという。駅に降りたときに全国どこでも同じような風景がつまらない。その土地の人が気付いていない魅力を発掘したいという想いや使命感で作っています。今の本が売れたら次が作れるので、ぜひ応援を(笑)

本物の体験を

キムラ:『変わるもの、変わらないもの』をテーマに進めてきましたが、終わりにみなさんへメッセージをどうぞ

ナガオカ:本当に欲しかったらいいモノを買いましょう。バブル時代は身の丈にあってない消費スタイルだった。いまは基本たくさんのモノはいらないので

くらもと:ただ必要のないものを持つのが人間なので、あまりに合理的に切り捨てる必要はないかと

ナガオカ:でも実は、妻に断捨離しなさいと怒られるぐらいに僕は物欲が凄いのですが、僕が思うのは、自分に投資をしない限りは、感動センサーは働かないということ

くらもと:お金と時間を割いているものが、その方の人生の価値なので、それを仕事にしなさいと学生に、講演会などで呼ばれると言っています

そうして、最後は質疑応答です。

もう一度同じ映画を観たいと思っても、新しい作品も気になるのでそっちを観る。どうしたらいいでしょうか?という質問には、

「センスがいい人は定番と新しいものの組み合わせがうまい。新旧どっちかを否定するのはつまらないので、どちらもうまくミックスしてみてください」と、ナガオカさん。

蔵本さんからは、「今はスマホで簡単に映画が観れる時代。でも大きいスクリーンに音響装置、いい椅子に座って大きい音に包まれ、他の人と一緒に過ごすという体験とは違うもの。もちろん多様化の時代だから色々あっていいのだけれども、本当の感動を味わおうと思ったら、絶対劇場の方がよい」

小売店を営む方からは、今後の売り方について意見を求められました。

「ライバルはインターネットなので路面店には路面店にしかできないことをやる」とナガオカさん。そして「ちゃんとしたものはちゃんとしたお店や場所で買ったり体験しましょう」と。

こうして、ジン大にとっても学び多き1時間半は、あっという間に過ぎたのでした。

■レポート/つじりゅういち

■写真/黒木 真由

2019年3月15日開催

変わるもの、変わらないもの 先生:ナガオカケンメイさん(D&DEPARTMENT PROJECT代表、ディレクター デザイン活動家)/蔵本順子さん(株式会社序破急 代表取締役社長) 教室:広島 T-SITE 2号館 2F SQUARE GALLERY

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