「名作は何度見てもいい。感じ方が見るときで違うから」
今から8年前、2011年5月「だから映画は素晴らしい!~夢の映画館 八丁座の舞台裏へ~」授業を復刻して開催された今回の授業。先生に支配人の蔵本健太郎さん、教室は八丁座映画館、そして参加者として八丁座・サロンシネマファンのみなさんが集まりました。全90分間の授業にはどんな展開が待っているのでしょう。

授業が始まる前からみなさん、テンションUP! 事務所に続く一室には、『ローマの休日』『プリティ・ブライド』『シティー・オブ・ゴッド』などなど、棚に所狭しと映画パンフレットが並べられています。実はここ、どなたでも見学できる場所なんです。旅行かばん型の『かもめ食堂』のパンフレット、私も持ってます!

授業は、好きな映画の紹介と参加者のみなさんの自己紹介から始まりました。『裏窓』『人生フルーツ』『ドリーム』『ノッティングヒルの恋人』など、映画好きのみなさんから出てくる映画はクラシックやドキュメンタリー、ラブコメディーと幅広い!

どのような経緯で映画館の仕事をするようになったのか、蔵本さんの映画館への想いを伺いました。
いまでは年間300本もの映画を見ている、蔵本健太郎さん。小さいころから映画館に遊びに行っていたものの、蔵本さんにとって祖父の代から続く映画館は、ただ親のやっている仕事という認識だったそう。
「映画を多くの人に伝える側になりたい!」 転機となったのは東京で就職して働くも悩んでいた時期。当時ミニシアターブームもあり、映画館に通う日々のなか、たくさんの映画に救われたそう。広島を離れたからこそ感じる、家族が運営する映画館の良さ。映画を伝える側になるべく、2004年に八丁座・サロンシネマを運営する株式会社序破急に入社。蔵本さんの映画とともに歩む人生が始まりました。

「サロンシネマの客席の椅子に1つ1つ記されている映画のセリフを見るのが好きで、全てを一覧で見ることができますか?」「おじいさんが運営されていた時代はどこに映画館があったんですか?」「八丁座とサロンシネマで上映している映画はどう選ばれているんですか?」と質問が飛び交いました。ちなみに八丁座では主に一般向け、サロンシネマでは映画ファン向けの映画をセレクトして上映していて、毎日営業終了後に行うスタッフだけの試写会でどの映画にするかを決められているそうです。

非効率、非日常をコンセプトに、多くの方が気軽に映画を見ることができる場所でありたいという思いから、江戸時代の芝居小屋をイメージして作られた八丁座館内にはこだわりが各箇所に。こちらの「松の廊下」のふすま絵は、京都東映撮影所から譲っていただき『十三人の刺客』で使われたもの。京都から八丁座まで車で運んできたという思い出を話してくださいました。

私たちが入場する際にはなかなか見られない、入場扉の表絵。こちらにも実はこだわりが。京都東映撮影所大道具美術にお願いして作られた扉は、全部1枚の絵になっているんです。四季によって色づくもみじが描かれています。映画を見る前に少し早めに映画館に入って、館内を歩いてみるのもいいですね。

いざ、八丁座・弐の劇場内へ。どの席が見やすいかなあ、好きな座り心地はどこかしら。みなさん、思い思いに映画館での自分のベストポジションに座られます。「映画のベストポジションは映画館である」という思いから、椅子を主役にした空間作りになっている八丁座。実は開発に1年以上もかかり、広島の木工家具メーカー、マル二木工の技術が結集されています。

ちなみに、蔵本さんはお客さんのリアクションも見ることができる、カウンター席で映画を見ることが多いそうです。

ここで突然クイズです!「スクリーンには小さな無数の穴があいています。それは何のためでしょう?」①音を通すため ②湿気をとるため ③映写の光を通すため

正解は、「①音を通すため」 スクリーンの裏側には巨大なスピーカーが3つ鎮座していて、バストショットのシーンではちょうど俳優の口の位置からスピーカーの音が出るようになっているそう。スクリーンに穴が開いているなんて! 座席からは知りえないですよね。

ついに、授業のタイトルにもなっている「八丁座の舞台裏」へ。映写室の中を見学させていただきます。

真っ暗な映写室に入っていくと、大きなデジタル映写機が中央にあり、また以前活躍していたフィルム映写機もありました。現在はデジタル映写機が主流だそうですが、フィルム映画がいつ来ても上映できるようにとフィルム映写機も置いてあるそう。

映写室の窓から劇場を覗くだなんて、まるで「ニュー・シネマ・パラダイス」のトトになった気分です。

上映終了後すぐ、お客さんの熱が冷めやらぬ館内。次の上映時間までの少しの間、舞台に上がらせてもらうことに。舞台挨拶をされる監督さんや役者さんと同じ動線で、舞台袖から入っていきます。

舞台から広がる景色がこちら! 普段見ることのない景色にみなさんシャッター音が止まりません。スクリーンに近づいて見てみると小さな無数の穴が。また真裏にはスピーカーがあり、臨場感ある映画が見られるのも納得です。

映画館がまちの盛り上げになれば…という想いで映画館を運営されている蔵本さん。「映画を見るのは、やっぱり映画館。街の中に映画が気軽に見られる街でありたい」という言葉が印象的でした。

授業終了後、蔵本さんオススメの映画を鑑賞しました。前情報なしで見たので、終始ハラハラドキドキしっぱなしでした。他の方に薦めてもらう映画っていいもんですね。自分では選ばない映画にも出会え、久しぶりの映画館からの帰り道、夜風に当たりながら終始余韻に浸っていました。